【猫の研究】猫ちゃんにだって思い出がある!
長い間、猫についての研究がなされていますが、まだまだ解明されていないことがたくさんあるんですね。
というのは、犬と違って猫の研究をするのが物理的に難しいからなんです。
犬は飼い主さんが一緒なら研究所でも学校でも、実験室に来てくれて割と簡単に統計がとりやすいんですが、猫ちゃんはというと・・・
猫はテリトリー意識が強い動物ですから、家から連れ出して研究室に行くのが一苦労、さらに見知らぬ場所では固まってしまって研究どころではなくなっちゃいます。
無理に実験(苦痛を伴わない実験)を行おうとしても、猫にストレスを与えるだけで結果を出すことができないわけです。
それでも猫好きの研究者は日夜がんばって研究を続けた結果、わかってきたこともありますよ。
このサイトでは高木佐保著「知りたい!ネコごころ」岩波書店のレビューを交えて猫ちゃんの心理について考えてみました。
ネコが思い出にふける!?
エピソード記憶
エピソード記憶というのを知っていますか?
人は誰でもこのエピソード記憶を持っているんですよ。
たとえば、高校生のときに行った修学旅行で友達といったお土産物屋さんの思い出、初めて動物園でトラやライオンを見た思いでなど、自分が体験した思い出を心理学では「エピソード記憶」と呼びます。
エピソード記憶というのは「覚えようとして覚える記憶とは違う」思い出のことです。
学校のテスト勉強で覚えなければいけない事柄とは違うんですね。
では、動物にもこういうエピソード記憶ってあると思いますか?
動物好きの方なら「そんなの当然、あるに決まってるじゃない」という方もいらっしゃいますが、これは実証するのが大変なんです。
犬や猫でこの実験をしようとして思いつくのは「ごほうび実験」じゃないですか?
〇〇ができたらおやつをあげる、みたいな。
でも、これだと「学習」した後の反射行動であって、私たちが意味するエピソード記憶とは言えないんですよね。
イヌの実験
そこで高木佐保さんたち研究チームは考えた。
同じ形、色の器(エサ入れ)に4種類のおやつを入れておきます。
フードボールは深いものを使うので、近づかないと中に何が入っているかわからなくしておきます。
飼い主さんにリードを持ってもらい、犬には好きな器からおやつを食べてもらいます、ただし、2皿まで。
2皿食べて、次の器に向かう所でリードを引いてもらい、食べられないようにします。
そして実験室を出てもらって15分ほど、研究室の周りをお散歩してもらい、再び実験室に戻ってきてもらうようにします。
実感室では同じ形・色の「新しい」器を4つ用意しておきます。
新しいフードボールを用意するのは、犬が臭いで判断しないようにするためですね。
器を置く位置も先ほどと全くいっしょ。
さて、問題です。
犬を自由に歩かせてみると、どの器に近づいたでしょうか。
さきほど食べた2つの器でしょうか?
ブーっ!ちがいますね。
実はさきほど食べ損ねた器に近づいたんですね!
犬はおやつの入っている器を「学習」して近づいたわけではなさそうです。
食べ損ねた器はどちらかというと犬にとって「嫌な記憶」のはずです。
そこに向かうということは、覚えさせられた記憶ではなくて自発的に覚えていた記憶に従って行動した、ということが言えるんですね!
ネコの実験
さあ、いよいよお待ちかねの猫ちゃんの実験です(笑)
犬と違って猫に同じ実験をするのは大変です。
何故かというとまず猫ちゃんは環境が変わると、大好きなご飯やおやつがあっても食べないことが多いからなんです。
そこで研究チームは猫カフェや一般のお宅に伺って、犬と同じ実験をしました。
それでも神経質な仔は知らない人がいることや、いつも食べている器じゃないことなどから、おやつに近づかない仔もいて、犬のようにすんなりと実験が進みません。
それでもフードボールをいつも使っているものに近いものに代えたり、猫ちゃんの「マイ器」を用意。
第1階として、犬の場合と同じように、全部の器におやつ(やっぱり『ちゅ~る』を使ったようですね)をいれて、
・2つは食べようとすると飼い主さんに体を軽く引っ張られて食べられないように、
・ほかの2つは食べられるようにしました。
食べ終えたところで、別の部屋に猫ちゃんを移してしばらく飼い主さんと遊んでもらって、おやつのことは忘れてもらいます。
<※犬のときもそうでしたが、食べ終わってから15分というのは、短期記憶できる時間、約48秒(人だと30秒)を大きく超えていて、おやつのことを覚えていられる時間をはるかに上回る時間です。
猫ちゃんが本当に「なにが」「どこに」あるのか記憶しているかどうかを確かめるため、第2段階では新たに次の4つの器を用意してみました。
・1つ目はおやつがはいっているけど、飼い主さんの妨害で食べられなかった器
・2つ目はおやつが入っていて食べられた器
・3つ目は猫に興味のないヘアピンを入れた器
・4つ目はカラの器
猫ちゃんはわざと食べ残すことがあり、それを覚えていた場合は食べ残しの器に向かう可能性があるので、新しく食べ残しのない器を用意したわけです。
さていよいよ、猫ちゃん再登場!
一体どの器に向かったと思いますか?
もうおわかりですね!
猫ちゃんは先ほど「食べようと思っても食べられなかった器」に向かい、長い時間探索することがわかりました。
この実験では58個体の猫ちゃんに協力してもらい、第Ⅰ段階でおやつを食べてくれた49個体のデータ結果が得られたそうです。
※参考図書:高木佐保著「知りたい!ネコごころ」岩波書店より
まとめ
犬や猫、そのほかの動物(カラス・ラット・イルカ・チンパンジーなど)もエピソード記憶を持つことが知られています。
「いいことがあった場所」を一度で覚えることは知られていますが、「いいことがなかった場所」についても記憶しているということですね。
エピソード記憶記憶を持つということは今現在のことではなく「過去」や「未来」につい想像する力があるということなんです。
猫ちゃんがいま、目の前にないことを想像できるとしたら、「このおもちゃ、こういう風にうごかないかな?」とか「冷蔵庫の上に行くにはこのイスより、こっちのテーブルから登るほうがよさそうだ」なんて想像しているかもしれませんね!
猫ちゃんのきもちがわかる研究がもっと進むと面白いと思います。